■2018年2月10日 インド経済を支えるインド系移民と在外インド人
2030年頃には、世界最大の人口を抱えることになるインドは、2017年には、7.2%,2018年年に
は、7.7%台の経済成長をするとの見通しをIMFが発表した。
年々成長率の低下が懸念される中国と比べ、これから、世界に与える影響力は年ごとに増加する。
製造業中心の中国と比べ、インドは、長年国策として、ソフト立国に力を入れ、シリコンバレーの裏
方的存在から、ここ数年で、さらなる飛躍を遂げようとしてしている。その基盤とするIT企業での成功の
秘訣は、大変熱心な人材育成施策にあると言えよう。
その中心になるのが、組織的な人材マネジメントの仕組み(タレント マネジメント)である。
今回は、その背景を探ってみよう。
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1. インドのソフト産業を外から支えるインド系移民と在外インド人
2.世界最大のソフト開発・ソリューションベンダーが割拠するバンガロール
3. インドIT企業の急成長を支えるタレントマネジメントの仕組み
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1.インドのソフト産業を外から支えるインド系移民PIOと在外インド人NIR
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インドの部門別構成比率(2011年)を見ると、ITサービスが48.5%、工業部門が、33.1%, 農業
部門が18.4%である。
圧倒的にITサービス関連事業が一国の経済を支えている。ITサービスの輸出に至っては、それを支えて
いるのが、米国(62%)、英国(17%)、欧州(11%)となる。正しく、欧米諸国の裏方役を一
手に引き受けているのだ。
インド人の優秀さを示して、欧米企業との架け橋を担っているのが、インド系移民(People of
Indian Origin)と在外インド人(通称:Non Indian Resident)といわれるインド系の移民たちで
す。その数は、約3000万人といわれる。いわゆる「印僑」と言われる人たちだ。
その中には、欧米企業の中枢を担っている経営者も増えており、シリコンバレーの8社の1社には、
インド出身者がいると言われている。
有名な所では、マイクロソフトのCEO、ドイツ銀行共同CEO、さらには、ハーバード ビジネス スク
ールの学長までが、インド系なのだ。
彼らは、欧米有名大学で学び、アメリカ人として、優秀なグローバル人材として幅広く活躍する超エ
リートと言える。
彼らは、決して、同胞だけで固まることはない。ここが、華僑との大きな違いにもなる。
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2.世界最大のソフト開発・ソリューションベンダが割拠するバンガロールとは?
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欧米IT企業の多くは、インドのバンガロールに開発拠点を置いている。
これは、インド政府が、IT振興策として、バンガロールに特区を設置したためだ。インドのR&D拠点に
進出した欧米IT企業900社中、なんと約半数がバンガロールにある。その最大の理由は、英語を話せる
優秀な人材を必要なだけ採用可能な点にある。
インドの小学校には、給食制度があるので、貧しい家庭でも子供に小学校に行くことを認める傾向が
あり、これが教育熱心になった最初のきっかけだ。
インド人は、いくらスポーツが上手くても尊敬されない。小学生の夢は、科学者、医者、エンジニア
に集中している。
特に、米国のMIT(Massachusetts Institute of Technology)を参考に設立されたIIT(インド工科
大学)の存在は大きい。
インド全土に16校で、共通試験が行われ、15、500名の学部生、12、000名の大学院生が
学んでいる。
IITの教育陣は、欧米有名大学で教育を受けた人達が中心となり、欧米大学で行われている英語版の最
先端のグローバルカリキュラムを実施している。
その中には、最新版のHuman Resource Managementやタレント マネジメントも含まれ、そのレ
ベルは相当高い。
入学するには、平均約50倍以上の難関であり、IITには専用の塾がある。
ここに入れない場合には、欧米の有名大学を目指しているというから、競争は熾烈だ。
インドのIT企業では、技術の進歩が激しいので、企業内での人材育成・人材開発の仕組みがきちんと出
来上がっている所が、急成長を遂げている。
インドの急成長を支えているIT開発企業のご三家は、TCS(Tata Consultancy Services), Infosys,
Wiproであり、これらの企業は、バンガロールを拠点にしている。
日本にも、日本支社があるので、なじみ深い人も多いと思われる。
優秀な学生は、大学時代から、タレント マネジメントとは、どんなものなのかを知っているので、
就職先としても、タレント マネジメントの完備したこれらのご三家に人気が集まる傾向がある。
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3. インドIT企業の急成長を支えるタレント マネジメントの仕組み
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これらのご三家は、欧米ソフト会社の下請けとして、各種のタレント マネジメント ソフト開発に貢
献しており、これらを自社に導入するだけでなく、各企業のニーズに合わせたカスタマイズ サービスや
導入に必要な仕組みづくり案も提供している。
例えば、TCSは、CHROMA talent managementと称して、新たなソリューションビジネスを
進めている。この中身は、最新版のContinuous coachingやStrength based assessmentを標
準搭載しており、その導入計画を含めて、提案している。
正しく、ソフト開発企業であるとともに、ソリューション ベンダーとしても、活躍している。
TCSは、タタ財閥の一企業ではあるが、社員は、今では、40万人と言われ、タタ財閥(約60万)
の半数以上にまで、成長している。本業の鉄鋼、自動車製造業より、成長率が高い。
また、Infosysも従業員約20万人(2017)であり、Wiproもこれにつぎ16万人(2016)
の従業員を抱えている。この分野は、それだけ成長率が高いと言える。
彼らがタレント マネジメントを導入する最大の理由は、優秀な人材を採用するためには、必須な育成
の仕組みだと考えているからだ。
また、最新の技術を提供できる人材を育て、定着させるためには、なくてはならない仕組みであり、
この実績こそが、仕事の糧にも繋がっていると考えているからでもある。
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■2018年5月6日 激動するビジネス環境と、これからのグローバル人財マネジメントの行方!
人材マネジメント協会SHRM年次総会(会員28.5万名)が、6月17−20日シカゴにて、開催さ
れる。
例年、グローバル企業の人事総務関係者・HRプロフェッショナル約15,000人が、自らの成果を発表
するために結集する。
今年は、World Federation of People Management Associations (WFPMA)(会員60
万名)との共同開催なので、規模をさらに大きくなると言える。
今回は、SHRM2018コンファレンスの動きと注目すべき視点を念頭にして、これからのグローバル
人財マネジメントの行方を考える。
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1. デジタル人事の流れと最新の人材マネジメントの大きな潮流
2. 企業風土改革、エンゲージメント改善もData解析で進められる時代!
3. 成長するグローバル企業のHRプロフェッショナルに役立つ事例集として活用できるSHRM2018コ
ンファレンス
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1. デジタル人事の流れと最新の人材マネジメントの大きな潮流
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グローバル人事の世界では、ピープル マネジメント、最新型のパフォーマンス マネジメント、タレ
ント マネジメント等のマネジメント強化の路線が全面に出てきて、ツールがいかにも進化したと思われ
がちですが、それよりむしろ、その中身は、従来、人事中心の各種人財マネジメント ツールを各事業
部、現場のマネジャーに解放し、現場がこれらの人財マネジメント ツールをより効率的な人財活用、人
材育成、人財開発を実現するための意識改革と支援/活用をより積極的に進める動きだと言える。
特に、ミレニアル世代への説明責任やモチベーションを高めるには、よりEvidence-baseの分析
結果を活用して、情報を開示することで、議論の活性化、決断への参加を促すことであり、この流れ
が一番有効だと言える。
その基盤を構築するには、継続的な気づきと学習を可能にする仕組み作りであり、これを支援するの
が、OKR手法により明確な目標づくりと各種の指標づくり、動機づけへのプロセスになる。
これをきちんと実践することで、やるべきことがより明確になり、週毎のフォローアップをITデバイ
ス上のやりとりで、実現できるようになる。
それを更に進展させるよい事例が、グーグルで実践されているPeople Analytics、Data
Analyticsの路線でもある。
また、社員メンバーの動きは、人感センサーで感知し、その相互の干渉状況を分析し、社員を含めて、
どう改善するべきかの指針作りや、仕組み作りに役立っている。
これらの手法は、すでにIBM本社での活用が進み、マイクロソフトのマネジャーの行動指針の決定に
も役立っている。
なお、これらの高機能ソフトウエアを折角導入しても、よほど熱心な方でない限り、積極的に活用す
ることはない。
導入時には、人事部の方針説明とともに、会社が何を目指しているのか、その達成のために、これらの
有効活用が不可欠であることを知らせ、導入研修を同時に実施し、その活用度、導入効果を測定して、
改善に務めることが必須になろう。
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2. 企業風土改革、エンゲージメント改善もData解析で進められる時代!
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SHRM2018コンファレンスの基調講演者の一人のペンシルバニア大学のグラント教授は、フォー
チュン500企業での企業風土作り、売り上げ改善、効率改善、従業員のエンゲージメントの改善に関
する調査を行い、その分析結果を発表する予定だが、この分析手法も、データ解析を基本にしており、
ヒューマン アナリティクスの分野への注目度は、ここ数年で、飛躍的に上がっている。
そのほか、Work XO Solution等のベンチャーがCulture Data分析をテーマにした発表、さらに
は、Cia Cervecerias Unidas SA (CCU)での意識改革プロジェクトの発表等の分析でも、Data分析
の手法が活用されている。
今年の特徴は、脳科学とエンゲージメント、脳科学とHRとか、脳科学を活用した人材マネジメント分
野からの発表も増加しており、これらの面でも大きな進展が期待できる。
GEが、従来のValue重視の他に、Beliefを重視する方針を打ち出したが、従来のリーダー像やマネ
ジャー像から、どんな視点に価値を見出すべきかの議論が増えており、各社が色々な方向性を打ち出し
ている点も面白いと言える。
SHRMでは、長年、Total Rewardsの重要性を強調していますが、航空会社のAmerican Eagle
での多様なベネフィットを可能にする新ベネフィット計画の導入事例、さらには、Wellness/
Wellbeingを拡充した企業、Health and Wellbeingに注目するオートゾーン社等、色々な事例発表
があり、参考になりそうだ。
今後、進展が予想されるTalent Intelligence, AI, 機械学習の可能性を議論するセッションも今後の
動向を検討する際に、役立とう。
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3. 成長するグローバル企業のHRプロフェッショナルに役立つ事例集として活用できるSHRM2018コ
ンファレンス
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世界最大のHRプロフェショナル集団である人材マネジメント協会SHRMでは、現役やベテランのHR
プロフェショナル(すでに11万人のSHRM CP/SCP認定者が存在)が、自分のもつ専門性を紹介する
場でもあり、ここでの評価を高めることで、転職への良い機会の獲得や新規ビジネスの開拓に役立て
ている。
今では、SHRMコンファレンスで発表すると、優秀な発表は、逐次、SHRM e-learning library
として、記録され、誰でも、閲覧料金を支払うことで、発表資料と音声、一部動画も閲覧することがで
きるようになる。
すでに、過去5年以上の発表事例700以上の優良事例が収録されており、コンファレンスに参加で
きなかった方でも、いつでも閲覧可能だ。
コンファレンス参加者だけ、しかも限られたセッションだけしか収録されてないATD等の団体と比べ
ても、その有効性は圧倒的に高いと言える。
SHRM e-learning libraryは、年次総会だけでなく、その他の主要コンファレンスからの優良セッ
ションが閲覧でき、大変役立つ存在である。
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